「ローンチ」というカタカナを使う人はバカである?

「ローンチ」カタカナを使うと商機を失う?理由
カタカナ語を使用する際の注意点を翻訳・心理学・マーケティングの観点から分析する

いきなり、激しいタイトルをつけましたが、釣りタイトルです。かなりマイナーな内容ですが・・・。

これは海外のIT・株関連のニュースを翻訳している方、そしてITを中心としたベンチャー起業をされている方向けへの私なりの提言です。あと、

去年の8月に、日本に本帰国して、会社立ち上げ、事業立ち上げの準備をして来た私ですが、帰国後にこういう言葉をよく聞くようになったと気がつきました。

「○○が今月末ローンチ」
「○○サービスがローンチ」

の「ローンチ」という言葉。

例えば

○Delicious 2.0ローンチ。いや本当。今度こそ正真正銘のローンチ
http://jp.techcrunch.com/archives/20080731delicious-20-launches-really-it-totally-launched/

など、IT系や投資系の記事によく使われております。日本語では何か企業が新しいサービス、特にオンラインでの新しいサービスや投資信託サービス等を立ち上げるときによく使われています。

私の英語はほぼネイティブ並み。アメリカを中心としたIT関連ニュースを英語で読んできました。そんな自分が、「ローンチ」というカタカナ表記の仕方についてすごく違和感を持ったのです。

そして、その違和感は、戸川奈津子さんが、スターウォーズ最新3部作の字幕でかなり勉強不足な日本語訳をして、作品を殺してしまったぐらいに「やっちまったな〜」的な違和感だったのです。

私が感じた違和感というのを説明させていただきます。ちなみに、私はカタカナ言葉を使うなとは言っていません。あくまでも、マーケティングの観点からのみ言わせていただきます。

1.発音の違和感

一昔前は、Wikipediaの記事にもあるように・・・

○「ローンチ」 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ローンチ

Launchのカタカナ表記は、私の記憶が確かならば、「ランチ」や「ラーンチ」と表記されていたと記憶しています。

また、辞書サイトである、Dictionary.comのLaunchのホームページに載せられている発音サンプルでも・・・。

○ launch – Dictionary.com
http://dictionary.reference.com/browse/launch

スピーカのアイコンをクリックすると、ネイティブの発音を聞く事が出来ますが、難しいところですが、「ランチ」という発音が近いような感じがします。よーく聞いてみると「ローンチ」というカタカナ表記でも良い気がします。

また、「ロケットランチャー(Rocket Launcher)」などLaunchの言葉を使っている他のカタカナ綴りでは、すでに「ラ」を使用しています。既に「ランチ」と使われていたのに変更するという事は、人々に混乱を与えています。

あと、「ローンチ」という言葉が使われ始めたのはここ数年。そして「ランチ」というカタカナ綴りは、おそらくアポロ11号世代までさかのぼれるとおもいますので、「ランチ」という言葉が幅広い世代に通じる可能性があります。

そして、この次・・・。

2.「ローンチ」の「ロー」は「Low」の「ロー」

「ローンチ」という言葉を使い始めたのは、私の憶測ですが、カタカナで「ランチ」といえば、昼食のランチです。なので、翻訳をしている方は、昼食のランチと混同されないように、と思われたのでしょうか・・・。

私は心理学者でもないし、言語学者でもないので、学術的な根拠はありませんが、

カタカナで「ロー」と使うと、どうしても、「低い」という英語である「Low」のほうに結びつきます。

なので、心理的に「ローンチ」というカタカナよりも「ラーンチ」「ランチ」というカタカナ綴りを使う方が明るいイメージがあるような気がします。

3.マージャン?

ある意味、ギャグ入ってますが、麻雀の「ロン」とちょっと無意識的に結びついてしまいました。

ギャンブルのイメージ・・・そして麻雀をされている方には本当に申し訳ないのですが、低俗的なイメージが無意識的に結びついてしまう可能性があります。

特に中高年以上の日本人投資家を狙っておられる方、注意して下さい。ただ、麻雀好きな方だったら良いかも・・・。

ということは、結論から言って、諸刃の矢的なリスクが生じます。「ランチ」か「立ち上げ」などを使用した方が安全牌と言えるかもしれません。

4.ネイティブ的に「ラーンチ」が有利

「Launch」のアメリカ英語の発音では「ラ」と「ロ」の中間でちょっと「ラ」寄りの発音です。なので、アメリカ人には「ラーンチ」と読む方が「ローンチ」と読むよりも通じる確率が高くなります。

そして、イギリス英語は、その反対で、イギリス人には「ローンチ」と読んだ方が通じやすくなるかもしれません。

じゃあイギリス人に通じるんだから「ローンチ」でもいいのではと考えても良くなります。

た だ、ここで考えるのは、イギリスとアメリカ、ITの分野ではどちらを優先した方が良いでしょう・・・。ということで、シリコンバレーでGoogle、 Yahoo、Microsft、Apple、Facebook等がひしめく、アメリカ英語の発音を優先すべきではないでしょうか?

—-

とここまで、「ローンチ」よりも「ランチ」や「ラーンチ」と表記した方が心理的、英語的にも有利であるという説明をさせていただきました。

ここからは、特にプレスリリースを書く方、IT・ベンチャー系の広報課で働いている方に注意すべきことじゃないかなと思う事です。

5.読者を考えて「ローンチ」と「サービス開始」を使い分ける

さて、ここで100万人ぐらいの会員を集めたオンラインサービスを開始したいベンチャーの皆様。次の文章を一般大衆に向けて発信するときに、どちらのキャッチコピーがより多くの人を集められるでしょうか・・・。

a)「ディアースタジオが夏休み宿題支援サイトをローンチ」
b)「夏休みオンライン宿題支援サービスを開設」

ここでのポイント。サービスは、小・中学生と、その保護者に向けたサービスである事。そして、小・中学生とその保護者の知識を考えて、どちらのキャッチコピーが分かりやすいのか考えてみて下さい。

6.「ローンチ」使うべき時はあるのか

しか〜し、最初にバカ呼ばわりしましたが、既に「ローンチ」という言葉はIT・ベンチャ−関連に浸透しております。カッコイイ〜というイメージもあります。

「ローンチ」をGoogleで検索してみると、24万9千件。Yahooでは、8万8千件の検索結果が出ました。

言葉というのは生き物です。別に私は文学者でもないし、日本語のモラルを嘆くような人間でもありません。あくまでもマーケティング(金儲け)の観点から物事を考えてみましょう。

「ローンチ」を使っても良いのでは、という時もあると思います。

それは、どういう人が「ローンチ」という言葉を使っているのでしょうか・・・。

1.英語ITサイトを翻訳している人
2.ベンチャーIT企業
3.ベンチャーキャピタル投資関係
4.ベンチャーキャピタルを扱っているメディア
5.IT関連を扱っているメディア

ということで、その中から考えられる「ローンチ」の使い方です。

1.大学生などの求人をするとき
2.ベンチャーかぶれの投資家を口説くとき
3.専門メディアへのプレスリリースを打つとき

というときに、「ローンチ」という言葉を使うのはアリかもと思います。

ということで、私、今後のプロジェクトでも、時と場合を考え、そして普及率をふまえながら「ローンチ」という言葉を使わなければ行けない時は使おうと思います。

7.まとめ

ということで、まとめですが。以上の事から

1.「ローンチ」という言葉、通じる範囲は狭いけれど、その限られた対象範囲なら、効果は絶大かも、慎重な見極めが必要
2.「ランチ」か「ラーンチ」と表記した方が、心理的、言語的に有利
3.でも、「開始」とか「立ち上げ」と日本語で使った方が、より多くの人に理解してもらえる

ってな感じです。

私もジャーナリストの端くれなので、気を使っていますが、重要なのは、伝えたい相手を見極めて、その相手に最大限で大勢に伝わる表現方法を常に考える事が、「ローンチ」という言葉の乱用をかいま見て、一部の人が下駄を履き違えているかなという印象を持ちました。

ということで、先ほどの例で使わせていただいた記事のタイトル

○Delicious 2.0ローンチ。いや本当。今度こそ正真正銘のローンチ
http://jp.techcrunch.com/archives/20080731delicious-20-launches-really-it-totally-launched/

ですが、日本人のより多くの人に分かってもらえるような翻訳をするならば、

「Delicious2.0やっとバージョンアップ?今度こそ正真正銘の立ち上げ」

にするでしょう。

しかし、Deliciousは、アメリカの英語のサービス。日本でのサービス開始はする予定がありません。この記事は海外のサービスに興味がある方、投資家、開発者などがメインのターゲットになっています。

ということで、これがプレスリリースで、日本語でのサービスを開始するならば、もっと分かりやすいタイトルにした方が良いと思いますが、この記事の場合は、上記の「ローンチ」という言葉が浸透している読者をターゲットにしています。

またDeliciousの事を良くご存知の方は、Deliciousのバージョンアップがかなり難しく、しかもトラブル続きだったので、ちょっと冗談入っていますし・・。

結論:「Delicious 2.0ローンチ。いや本当。今度こそ正真正銘のローンチ」のタイトルは適正である。

です。

(2008/09/25)追記:以下のような統計結果が出て来ました。

統計的な証拠が出て来た?「ローンチ」という言葉をつかうと商機を失う理由

http://ja.katzueno.com/2008/09/740/

ぜひ、これもご覧下さい。

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  • Sorrybutundisclosed

    はじめまして.通りすがりの者です.
    古い記事ですが,面白かったのでコメントさせていただきます.

    ご案内のとおり,launchの au は長母音で,日本では「ロケットランチャー」といった語での「ランチ」が先に定着してしまったものの,音に忠実な表記はラーンチかローンチなのでしょうね.

    で,件の「ローンチ」ですが,実は,日本のある部分では30年近く使われていて,その音が既に定着してしまっていたのです.
    どこで使われていたかというと,国際金融の世界,特にロンドンを中心とした国際債券市場に関係する日本の金融マンあるいはその周辺にいた弁護士等々の人々のコミュニティにおいて,であります.

    戦後,金融に対する機制の厳しいアメリカを避ける形で,ロンドンを中心としたオフショア金融が発達しました.そこでの国際的な資金調達取引の集合体を「ユーロ市場」と呼んでいました.ユーロ市場で発行される債券はユーロ・ボンドと今でも呼ばれます.

    ユーロ・ボンドの発行を対外的に発表することを,市場のジャーゴンで “launch” と言いました.当時は,”World Bank has announced the launch of its US$100mil 10-year Eurobond.” といったニュースが毎日のようにロイターやテレレートといった情報端末に流れていたものです.日本の金融マンや,彼らと共に仕事をする渉外弁護士たちは,それを音のまま「ローンチ」と呼んでいました.私もその一員としてロンドンの金融機関や弁護士事務所の英国人と電話でよく話しましたが,やはり彼らネイティブの発音は「ローンチ」でした.

    国際資本市場で資金調達を行うような日本企業は当時も今も一握りです.そうした超特大優良企業で資金調達に関わるような人々はエリートであり,彼らはある種のスノビズムを感じつつ国際金融業界の用語を日常的に使っているように見えました.

    その後,日本でも欧米にならって証券市場が発達し,国内でもかつての国際金融用語がそのまま使われるようになりました.90年代に入ると,国内企業の財務に関わる人々の間でも「ローンチ」といった語が定着していきました.

    国内のIT企業がローンチという言葉を使うようになったのはどこからでしょうか? 旧型の重厚長大企業でありながら業容はIT企業でもあるNTTあたりが pivot point となってじわじわ広がっていったのかもしれません.いずれにせよ,若い企業の人々はその語がずっと昔から日本の金融界の一部で使われてきたことなど知りもしないでしょうし,また,日本の経済界の上澄みの部分で財務に携わってきた人たちは,そうした若い企業に属する人たちの言葉づかいを聞くと,ませた子供が大人の言葉を使うのを見るような目で,苦笑しつつそれを眺めているのではないでしょうか.