世界に売れる日本映画は作れるのか?(その2)

さて、強引に仕事をそっちのかして、前回の続きです。日本は今後、世界に売れる映画をどうやって作って行ったら良いのでしょうか。それは、まず、日本の映画の歴史をちょっとだけ解説する事から始めましょう。

○世界に売れる日本映画は作れるのか?(その1)
http://ja.katzueno.com/2008/11/889/

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○ハリウッドでめちゃめちゃ人気な「世界の黒澤」

実は一週間ほど前、アメリカの公共ラジオニュースで、6分も黒澤監督の特集を組まれていました。

○Kurosawa Celebration, From Many Angles
http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=96819591

「Listen Now」をクリックすると、実際の放送をお聞きになれます。

内 容は、なんと、アカデミー賞を主催する、ハリウッドの映画の最高峰、映画芸術科学協会が、マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)氏監督と一緒に、「羅生門」の傷のついたフィルムを復刻し、その記念として3ヶ月もの長期間、記念イベントを行っているというもので す。

しかも、監督のマーティン・スコセッシ氏は自分のポケットマネーを出して、この復刻版に貢献されたそうです。

マーティン・スコセッシ氏は最近デカプリオと組んで映画を作っているので彼の作品をご覧になった方もいらっしゃるでしょう。スピルバーグ氏もこのプロジェクトに賛同しているみたいです。

そんな大物が、黒澤監督をベタ褒めして、しかもお金を出してくれているんです。とにかく、すごいことなんです。

実は最近日本のテレビを見る時間がないので分からないのですが、日本のニュースでは取り上げられているのでしょうか?

アカデミーが、アメリカ人以外の映画関係者に3ヶ月もの長い間、記念イベントを行うというのは画期的です。
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未だに日本の映画が世界に認められている証拠でしょうか・・・?

しかし残念ながら、「Kurosawa」を賞賛しているのは、彼の作品を知っている映画のマニアのみ。一般のアメリカ人は、名前は知っているかもしれないけれども、黒澤監督の作品を見た事がある人はほとんどいません。

というか、日本でも同じ事が言えますけれどね。
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ということで、こういうことがわかります。

黒澤監督が全盛期であった、1950−70年代は、日本の映画は世界に売れている映画を作り出していました。でも、今はそんなことはないんですね。

なぜなんでしょう。
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○1950−70年代の日本は映画産業を支える事が出来たという事

つまり、簡単に言うと

1.その時代はテレビがない
2.その時代はゲームがない
3.経済成長で貿易黒字が続いていた
4.資金がほとんど日本国内にあった

からです。映画がめちゃくちゃ売れた時代です。

なので、黒澤さんは、潤沢な資金で自分がこだわる作品を作る事が出来ました。
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○黒澤作品の後期の作品の特徴からも分かる海外資金に頼ざるを得ない状況

なので、彼が「乱」を作るときに、資金繰りにすごく苦労したのは有名な話で、最終的にフランスから資金を手に入れる事が出来ました。

つまり、黒澤さんの晩期にでさえ、日本国内の資金だけでは作れないという事が黒澤さん自身のケースで証明されたという事です。

だって、今では映画のみならず、テレビ、ゲーム、携帯、インターネットがありますからね。

映画とは、ある意味、私たちの中で規模が大きい作品です。規模が大きいという事は資金が必要です。

それくらいのリスクを日本国内で負えるのは、残念ながら、テレビドラマの映画版だけとなってしまいました。

ということで、日本国内だけでは資金を調達出来ません。なので、海外資金に頼らざるを得ないのが認めなければ行けない実情だと思います。
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○パターンで読む海外進出した日本の映画たち

さーて、じゃあ、今から日本で世界に売れる映画を作りたいと思っている皆さん。

今まで日本が元になって世界に発信された映画をパターンで紹介して行きましょう。
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○アニメ・漫画

これは、ちょっと分野が外れるのですが、アニメ産業はすごいです。世界中で売れています。そして、今、日本のマーケットが小さくなって来たのでアニメ業界の方は既に矛先を世界に向けています。

先日、NHKスペシャルで「日本とアメリカ」という特集が組まれていたのですが、その中に、

○NHKスペシャル|日本とアメリカ 第2回 日本アニメ vs ハリウッド
http://www.nhk.or.jp/special/onair/081027.html

という放送がされました。

アニメ業界ではきちんと、マーケットが縮小している日本から世界に打って出ようとしています。

ドラゴンボールや鉄腕アトムも公開されますしね。

これに関しては長々と書けるのですが、短く言うと、日本では人材育成のためのシステムが、コミックマーケットから、専門学校から十分発達している事が要因だと思います。

映画業界も、ショートフィルムの映画祭等を作って活性化して行く事が望ましいです。詳しくは

○映像コンテンツ後進国日本の課題 – YOSHIMOTO DIRECTOR’S 100からみる可能性
http://ja.katzueno.com/2008/11/866/

に書いてあります。

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○ハリウッドに全部持ってかれる

○「ワイルド・スピード」

みなさん、「ワイルド・スピード」という車のレースの映画をご存知でしょうか。

実はこれ、日本のドリフト族が元になっているのです。

しかし、劇中に出てくるのはアメリカ人ばかり、やっと最近の「3」で舞台を日本にしてくれました。

実は「3」で監督をしているのは中国系アメリカ人のジャスティン・リン氏。続編も彼が監督になる事が決定しているようです。

アメリカでの公開は来年になるようです。
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○IMDb中の「ワイルドスピード」続編のデータベース
http://www.imdb.com/title/tt1013752/

ちなみに、QuickTimeをお持ちの方は、ここからHDで予告編を観る事が出来ます

○Fast and Furious – Apple Movie Trailer
http://www.apple.com/trailers/universal/fastandfurious/

面倒くさいという方は・・・

○YouTubeでの公式予告編
http://www.youtube.com/watch?v=LdSnZvseggw

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をどうぞ。
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とにかく、この「ワイルド・スピード」がアメリカでハリウッド映画として作られた経緯はこうです。

1.日本でドリフト族が有名になる
2.Vシネが作られる
3.中国や東南アジアに受ける
4.アメリカにいる中国系アメリカ人に受ける
5.アメリカにいる中国系アメリカ人のギャングたちがこれのマネをする
6.普通のギャングにも受ける
7.映画になる

つ まり、アメリカでドリフトの普及を「貢献」したのは、中国系アメリカ人の人たちです。今でもアメリカの中国系アメリカ人の人たちが住んでいるところに行く と、時々日本ナンバーをわざわざ日本から個人輸入したり、若葉マークをつけた、マフラーをめっちゃ改造している車を見かけますが、そのオーナーのほとんど が中国系アメリカ人の若者です。

ちなみに、アメリカでもドリフトは違法ですので、違法行為は行わないように。

とにかく、こういった経緯で「ワイルド・スピード」がハリウッドで作られました。しかし「1」と「2」では、こういったアメリカの中国系アメリカ人がドリフトを浸透させたのを完全に無視したので批判がありました。

そして「2」の時にあまり興行的ににふるわなかったので、ハリウッドの重役も重い腰を上げ、「3」からは、この事情を良く知っているジャスティン監督がメガホンを握ることになったのです。

そうしてジャスティン氏が、日本に敬意を表して「3」の舞台を日本にしました。

ただ、公開時の記念パーティーに参加した時の逸話話ですが、日本で撮影した撮影素材の一部が「不慮の事故」でダメになってしまったので、ロスで撮り直さなければ行けなかった等というエピソードもあります・・・。

とにかく、資本も利益も、すべてアメリカに持って行かれた「逃した素材」の一つです。それか、隠れて日本のどこかのVシネの権利を買っているのかな・・・。

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○「ラスト・サムライ」

「ワイルドスピード」は、出演者がほとんどアメリカ人・・ということで大変残念な結果になってしまいました。

次は、ちょっとましな、「アメリカに先を越される」例・・・そう「ラストサムライ」です。

○YouTubeでの予告編たち

です。これは日本人キャストがほとんどで、日本に関する事も、もちろんハリウッド受けるように着色されていますが、日本人としてもある程度満足出来るないようではなかったでしょうか・・・。

「これで日本人進出か」と思いましたが・・・あくまでもハリウッド主体なので・・・

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○「サユリ」

のように、主演をチャン・ツィイーに持って行かれてしまいました。

所詮はアメリカ人はアジア人は誰でも同じように見えるし、日本語も中国語も分からないので適当にキャスティングされます。

そして、この手法は、大きな規模で出来るけれども、ハリウッド俳優が出ないと行けないし、日本側はコントロール出来ないし、全然お金儲かってません〜。

しかしながらこういった映画をハリウッドが作り続けて行ってくれるというのは良い事ですので、作られないよりはマシ・・・です。

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○日本が権利を売る、だけどハリウッド

これは、「ドラゴンボール」や「鉄腕アトム」にあたります。

<関連記事>
○ハリウッドは今中国が支配している…けれども
http://ja.katzueno.com/2008/11/878/

これは、日本に権利があるという事で、ある程度のコントロールが出来ますが、しかし実態はハリウッド主体です。でも、ましなほうですね。

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○日本人が監督、だけどハリウッド

そうして、清水崇さんによる「呪怨」がハリウッドで、清水さんの手により監督をされて、「The Grudge」を制作されました。

これは、清水さんが先に日本で日本語版を作り、その権利を売る際に、自分が監督になるという条件をつけ、監督になる事が出来ました。

これは、ある程度おいしい例の一つです。

しかし、清水さんでも、リメイク版ではハリウッド寄りの作品にしたために、「The Grudge 2」が日本であまり売れなかったなど問題も出て来ました。

私のあくまでもの予想なんですが、いくら清水さんが日本人の監督であっても、周りのスタッフやプロデューサーはほとんどがハリウッド側です。

なので、清水さんもかなりの妥協を強いられたのではないかと思います。

そうして今まででは、このケースは清水さんだけです。後継者がいないのです。つまり日本にはこういった人材を輩出出来る環境が整っていない事を証明することになります。

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○日本映画が珍しく売れた

これも特異なケースです。

○「シャル・ウィー・ダンス」

です。これは、アメリカで原作がある程度売れ、しかもリメイク版もハリウッドで作られたという、アメリカで2度おいしい味をなめられています。

ただし、このケースは、これ一度きりなので、詳しい分析をしません。いろいろかけるのですが・・・このあとの実績がないので割愛させていただきます。

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○日本映画がアメリカに入って来るパターン

それでは、今、アメリカでは、日本映画がどのように入っているのでしょうか・・・。これが一番例が多い事例です。

それは・・・

○アジア系映画祭に出典

今アメリカではアジア系の映画祭として有名なのは・・押さえておきたい順に・・・

○Louis Vuitton Hawaii International Film Festival
http://www.hiff.org/

○San Francisco International Asian American Film Festival
http://festival.asianamericanmedia.org/

○VC Film Festival – Los Angeles Asian Pacific Film Festival
http://festival.vconline.org/

○The Asian American International Film Festival – ニューヨーク
http://www.asiancinevision.org/festival.html

です。この他にも、サンディエゴや、ワシントンDCなど、押さえておきたい映画祭がありますが、割愛させていただきます。

とにかく、私はこれらのアジア映画祭を始め、各地のアジア系の映画祭や一般の映画祭に参加して来ました。サンダンスやロサンゼルス映画祭、AFI映画祭等この他にも日本の映画を出展出来るチャンスがいっぱいあります。

つまり、日本の映画に見られるパターンが

1.映画祭にとりあげられる
2.ちょっと注目を浴びる
3.短館上映や運が良ければアート系シアターでの上映ができる
4.アメリカで公開出来なかったとしても映画祭に参加した事でDVDが発売される

があげられます。

これが今、アメリカで見られる一番多いパターンですが、認知度はアジアが好きなアメリカ人やアジア系アメリカ人にしぼられてしまいます。

が、日本で一通りの収益を上げた映画の作品がこうやってアメリカに進出するために映画祭に出るという事はある一定の効果を上げています。

ただ、あくまでも資本が日本資本なので規模が大きい映画が作れないのが玉にきず・・・。

ただし、以下のようにチャンスはあります。

<関連記事>

○「DMC」の次は「パコ」になるか?
http://ja.katzueno.com/2008/09/723/

○「デトロイト」のリメイク権から考える日本の映画業界の今後
http://ja.katzueno.com/2008/09/708/

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○世界に売れる日本映画を作るには

などなど、ちょっと間が空いてしまって申し訳ないのですが、日本が世界に売って行く事が出来る映画は、今の日本映画がどういう状況になるかをまず最初に知っておく必要があります。

また繰り返しますが、日本の映画産業は、今、海外の資本がないと黒澤監督規模の大きな映画が作れないからです・・・。

ちょっと強引にまとめますが、以上に述べた要素をすべてまとめた映画が理想的ではないでしょうか・・・。

例えば、ハリウッドの資本、ハリウッドの人材と世界のマーケットを良く知り、そして日本の文化にも精通した映画人が輩出されないと、バランスのとれた映画を作れないのではと思います。

ということで、かなり実現不可能な感じがしますが、今、私はその不可能を可能にすべく地道に頑張っている次第です・・・。

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