500ドルの映画と「アバター」の200億。制作会社経営者が考える制作費と経費計算

さて、私事ですが、この11月で、当社の第2期目が無事に終了しました。当社設立2周年を迎えることが出来ました。

ということで、会社や自営業・経理の方ならお分かりでしょうが、私は今、決算作業に大忙しです。

今のところ、第1期に比べて、売上が2倍以上、しかし、それ以上に、新しい撮影・編集機材やサーバーの増強を行っているので設備投資が2倍以上かかっております。なので、未だに貧乏生活ですので、お金は貸せません(苦笑)

ということで、経理の作業をしているときに、私がメンバーになっている映像制作者のプロが集まるSNS「DAIVCS2」

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● DAVICS2
http://www.davics2.net/

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で、メンバーさんが、このような記事 & 映像を紹介されていました。

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● たった500ドルで作った素人映画が凄い! ハリウッドが26億円提供へ
http://rocketnews24.com/?p=20064

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ウルグアイに住む“普通”の会社員の人が500ドルでとあるショートフィルムを作りました。以下に埋め込み。

● Ataque de Pánico! (Panic Attack!) 2009
http://www.youtube.com/watch?v=-dadPWhEhVk

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そして、このショートフィルムがYouTubeでかなり話題になり、この会社員の方は、この長編版を制作するために、ハリウッドからヘッドハンティングされ、26億円の提供をうけたとのこと・・・。

ほほー。素晴らしいですね。作品の完成度も素晴らしい・・・。ということで、今日は、これをネタにツッコミを入れたいと思います。現実的に・・・しかし、実現可能であることを説いていきたいと思います

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● 映像制作会社のYouTubeのマーケティング成功例
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ここで、日本の記事のタイトルに注目してください。

「たった500ドルで作った素人映画が凄い! 」

まず最初に、この記事中に・・・・。

    「フェデリコ監督はウルグアイに住む普通の映像関係会社の会社員。」

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と書いてあります。

ここでツッコミ。

おみゃあ、映像関係会社の会社員だったら、素人じゃねーやん。

ということで、彼の勤めている映像関係会社関連のホームページを見てみましょう。

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● Aparato
http://www.aparato.tv/

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ここの「REEL」をクリック、そして、出てくるスクリーンをクリックしてみてください。

おお、でるわでるわ・・・。

・Chevy (シェビー)
・ペプシ
・ナイキ
・ネスレ

のコマーシャルが・・・。

をいをい・・・「普通」じゃねーやん。大手企業から仕事を受けているエリートじゃん!

完全なるプロの映像集団です。

た だ、ここで補足しておきますが、「素人」という記事タイトルを付けているのは、日本語の記事のみで、元々の英語の記事には「Unknown」=「無名の」 というタイトルがついています。彼は、「素人」としてではなく、「無名の逸材」としてハリウッド関係者にヘッドハンティングされたのです。

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ということで、元の記事を精読してみると・・・。

● Unknown filmmaker gets $30m for robot movie
http://newslite.tv/2009/12/02/unknown-filmmaker-gets-30m-for.html

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    Would-be director Federico Alvarez, who runs a post-production visual effects house in Uruguay
    (フェデリコ監督は、ウルグアイで、CG制作会社を経営している・・・30歳)

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制作会社のエリート・やり手・若者経営者だった〜〜。

翻訳しっかりしてくださいね〜。
でもいいか。私も、こうやって、ネタにできたので〜。

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● 無名のウルグアイの映像制作者の賭け?
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ということで、みなさん、ウルグアイってどこの国だかわかりますか?

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● ウルグアイ – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%82%a6%e3%83%ab%e3%82%b0%e3%82%a2%e3%82%a4

スペイン語を共用語とする、人口は300万人の小さな南アメリカの国です。

これはあくまで私の予想ですが、この映像を作ったフェデリコ監督は

・プロの経験も長年ある
・広告業界で大手企業とのコネクションもある
・映画の構想を練っていた
・しかしウルグアイの人間なんか注目してくれない〜

という境遇にあったと思いますが・・・

・YouTubeで世界中の人が有名になっていくのを目の当たりにした
・一発奮起してプライベートの時間を作品に費やした
・長編映画の脚本も準備した

というシナリオだったのでしょう。(あくまでも私の個人的で勝手な予想ですが)

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● 制作費「500ドル」って実はウソ?
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次に、この「制作費500ドル」を紐解いてみましょう。

さ て、この月曜日、ロサンゼルスのラジオ局「KCRW」のハリウッド・ビジネス番組では、「アバター(Avatar)」を作ったジェームズ・キャメロン (James Cameron) 監督の自叙伝を執筆した Rebecca Keegan を招いて、キャメロン監督と最新作「アバター」の制作秘話を話しあっていました。

以下のリンクから実際に番組を試聴出来ます。

● King of the World – The Business – KCRW
http://www.kcrw.com/etc/programs/tb/tb091207king_of_the_world

キャメロン監督に関してのトークは6分30秒目くらいから始まります。

その中で、パーソナリティーのMaster氏とKeeganさんが、興味深い話をしていました。番組開始17分52秒目当たりです

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<かなり割愛 & 要約>

Master: 「いろいろメディアで取り上げられているけれど、今回の「アバター」の制作費、どれくらいになるのかしら」

Keegan: 「うーん。どれが「予算」なのかわからないわね。」

Master: 「それまたなんで?」

Keegan: 「リサーチや開発費用をどう計上するかよね。キャメロンは、「アバター」で開発 & 使用した新型3Dカメラを、ディズニーや、ディスカバリーチャンネルのドキュメンタリーでも使っているのよ。だからその開発費用をどうやって経費に計上す るかよね〜」

Master: 「ハリウッドの会計士たち、忙しそうね〜」

Keegan: 「まったく。今、パソコン上で、数字を動かしまくっているわよ。弁護士や投資家が自分の受け取り分をしっかりさせたいから・・・でも、“公式”の見解では230百万ドル(230億円)だわ〜。」

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ということで、200億という予算が計上されている、キャメロン監督の最新作「アバター」。

私の予想では、そのうちの3分の1以上は、今後も制作会社が使い続けていくことができる、カメラ・撮影機材・CGソフト・撮影制御システムだとおもいます。つまり、「アバター」の売上で回収出来なくても、今後の映画で使いまわせていくことができる開発費用です。

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簡単な例:

円●プロ:今度の新作「ウル◯ラマ◯」の映画で新型カメラ使いたい

ソ●ー:了解。じゃあ、新しいカメラ作るよ〜

<一年後>

ソ●ー:でけたよー。開発費に20憶円かかったから、15億払って

円●プロ:え〜。なんでよ〜。どうせ、そっちもそのカメラ売るんでしょう〜。

ソ●ー:(ドキっ)でもさ〜、このカメラ、この作品のために作ったんよ〜

円●プロ:しょうがないな〜。10億にまけてくれ〜

ソ●ー:そんだけですか・・・。しょうがない・・・分かりました。10億で手をつけましょう・・・
(ラッキ〜。もう100社が1システム3000万で購入してくれるって言ってるから、10億ぐらい利益くるぞ〜。ウッシッシっし〜。)
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(このストーリーはフィクションです。)

というからくりです。(実際は上手くいかない・儲からないことも多いですが・・・)

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ということで〜。最初の500ドルのショートフィルムの予算を見直してみましょう。

質問1:「アバター」ではカメラの経費が入っています。このYouTubeの動画は?
質問2:「アバター」では使用したCG作成ソフトの経費が入っています。このYouTubeの動画は?
質問3:「アバター」では俳優にお金を払っています。このYouTubeの動画は?
質問4:「アバター」では監督にお金を払っています。このYouTubeの動画は?

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答えは、おそらく、すべて「No」です。

上記のYouTubeのショートフィルムは、映画を作成するために実際に使ったお金を制作費に換算していません。

私の予想ですが、500ドルの予算の殆どは、「ハードディスク代」と「食事代」でしょう。

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ハードディスク & 食事代:5万円
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カメラ:30万円(予想)
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コンピュータ:30万円 x 3台(予想) = 90万円
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CGソフト:50万円(予想)
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登場人物:10人 x 1万円 (友情出演だと思うのでタダ働き) = 10万円
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ロケーション:場所使用代(5〜10万/1カ所)
川岸、道路、工場脇、郊外、役所、市街地 x 2、ビルの中、ランドマークタワー (9カ所)
= 70万円(予想)
(許可を取っていても市街地と役所の周りくらいのみでしょう。おそらく、コネか無断撮影しているのでタダでしょう)
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スタッフ費:
監督 x 2ヶ月 = 200万円
(おそらく監督がカメラもした)
VFX x 2人 x 2ヶ月 = 400万円
作曲 x 1 = 20万円
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普通に撮影するなら:870万円
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でも〜。この監督は、おそらく

「今までブランド物のCMとか発注して、儲けさせてあげたでしょ〜。ボクとアナタ、トモダチね〜〜!!」

と調子いいこと言って頼んだと思うので、ロケーション代 & 人件費の部分を完全カット。

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人件費カットしても、どう考えても:170万円
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映画「アバター」の230億円の予算の算出方法を割り当てると、上記のショートフィルムの制作費は・・・

監督の長年の映像制作会社で培った経験と人脈 + 170万円

が、制作費だと思います。

ただし、CG制作会社の経営者という特権を使い、会社のコンピュータの備品をタダで使えたので、500ドルになったのでしょう〜。

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これって、映画意外にも会社の予算とかにもにも当てはまりますね〜。「いやいや、これは私のプライベート」って・・・(苦笑)

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● 理屈立てて言ったもん勝ちの映画業界?
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ということで、最初は「YouTubeで動画を公開すれば、誰でも有名になれる可能性を秘めている〜ぞ〜!!」とエキサイティングに思われた方には残念ですが・・・。やはり、5万円(500ドル)あれば誰でも、可能性を秘めているとは限りません。

映像制作にも限らず、製造業・サービス業、投資業、この世の中で、ひょひょいと簡単にできるものはありません。

みなさん、精進しましょう〜。

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● いやいや、やっぱり可能性を秘めているのも事実
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しかし、ネットのなかった、YouTubeの無かった10年前、ウルグアイの優秀で、頑張っている映像制作者が、ハリウッドの関係者の目に止められる機会はあったでしょうか?日本でこのような形で有名になれる機会はあったでしょうか?

限りなく不可能です。

YouTubeをはじめとするネットの技術により、地理による不公平さが縮まってきたというのは事実です。

一番重要なのは、「地方にいるからどうせダメだな〜」とあきらめないことじゃないでしょうかね〜。

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というか、実際に、私は、三重県で、ハワイで撮影されたサーフィンドキュメンタリーや、サンフランシスコで撮影されたハムスターの映画。そして、ナイジェリアのガス会社のホームページを作り、テキサスのピザ屋さんのホームページも作っています。

地方は関係なくなってきましたよ〜みなさん〜。頑張りましょう〜。

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<関連記事>
● 「Avatar」は「Titanic」を超えられない
http://ja.katzueno.com/2010/01/1111/

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