「Avatar」は「Titanic」を超えられない

さて、ジェームズ・キャメロン監督の「アバター」。アメリカでの興行収入が公開後17日間で3億5200万ドルを稼ぎ出しました。

● ‘Avatar’ takes aim at ‘Titanic,’ ‘Dark Knight’
http://www.hollywoodreporter.com/hr/content_display/news/e3i6ad645d17ccf55b7d958e4efd82df226?imw=Y

これは、公開後17日では2億41百万ドル稼いでいる「タイタニック」よりもペースが早く、最終的には「タイタニック」の最終的な興行収入である、18億35百万ドルを超えるだろうと言われ始めました

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●実はドル安とインフレの恩恵も受けている?「アバター」興行収入
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キャメロン監督は、どうやって「タイタニック」を超える作品を作ろうかと試行錯誤を繰り返してきた12年ですので、「すごいなーキャメロン監督と『アバター』」と思いましたが、ちょっとここで疑問が・・・。

1997年当時の「タイタニック」公開時私の周りを見てみると、マジで、ほぼ全員が「タイタニック」を見に行っていたのを覚えています。しかも中には何回も映画館に通った人も・・・。

でも、今回の「アバター」。知人で見に行っている人は確かに多いのですが、でも「タイタニック」ほどではありません。10年前はネットや携帯のネット普及率もゼロでしたので、「タイタニック」を見に行くしか無かったのですが、今はいろいろな遊び方が提案されています。

なんか〜。この記録更新に腑に落ちないことがあるので、ちょっと考えて計算してみました。

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●アメリカの映画チケットが2倍に?

実 は映画料金のインフレがアメリカで進んでいるのです。10年前は一回5~7ドルで見ることができたアメリカの映画館。実はこの10年で、アメリカの映画館 の平均鑑賞料金は1.5倍に・・・しかもロサンゼルスの映画館なんか一回12ドル〜15ドルと、日本並の価格になってしまったのです。

●参考:AVERAGE U.S. TICKET PRICES – The National Association of Theatre Owners
http://www.natoonline.org/statisticstickets.htm

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しかも、この「アバター」は3D映画ですので、映画館は追加料金を徴収しています。

ということで、「アバター」はアメリカの映画チケット、ほぼ2倍の値上げのおかげで、「タイタニック」の半分の観客動員数でタイタニックの売上を超えることができるのです。

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●ドル安で増えたように見えた?

タイタニック当時のドル円為替レートは130円ほど。今の為替レートは90円・・・ということで、「タイタニック」と「アバター」の興行収入を円換算、しかもインフレの計算を入れて計算してみましょう。

だいたい、アメリカのインフレ率は 1998-2008で約130%です。

●インフレ参考:InflationData.com
http://inflationdata.com/inflation/Inflation_Rate/HistoricalInflation.aspx?dsInflation_currentPage=0

タイタニック = 241 x 130% x 130 = 約407憶円
アバター = 352 x 90 = 約316億円

ということで〜。インフレと為替換算をしてみると「アバター」は「タイタニック」よりも 90憶円、稼ぎが少ないって結果になっております。

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●インフレ換算をすると・・・
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実はこの「興行収入」ですが、面白いことに、観客動員数ではないんですよね。
売れている映画を見極めるのに一番必要なのは、観客動員数であると私は勝手に見ています。

映画が世の中に出てから100年経ちます。
ですので、今の$10と昔の$10では価値が全然違います。

なので、いくつかの映画サイトでは、当時の映画館のチケットが何枚売れたかを計算したインフレ調整後のアメリカ国内の興行ランキングを発表しています。

http://boxofficemojo.com/alltime/adjusted.htm

ここでの映画第一位は・・・1939年公開の「風と共に去りぬ (Gone with the Wind)」。

「タイタニック」、アメリカでの観客動員数が、推定1億2,800万人
「風と共に去りぬ」、アメリカでの観客動員数はなんと2億人!

そして人口変化を計算に入れてみましょう。

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アメリカの国勢調査のデータによると

http://www.census.gov/population/projections/nation/summary/np-t1.txt

1998年のアメリカの人口は、推計約2億7千万人。

一方、

http://www.census.gov/population/censusdata/urpop0090.txt

1940年アメリカの人口は、推計約1億3千万人です。

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つまり・・・

「タイタニック」 = 1億2,800万 ÷ 2億7千万 = 約0.47人 = アメリカ全国民の半分以下
「風と共に去りぬ」= 2億人 ÷ 1億3千万 = 約1.53人 = アメリカ全国民が1.5回以上観ている!

計算になります。

ということは、この結果から「アバター」が「タイタニック」よりも興行収入が多かったとしても、「風と共に去りぬ」「タイタニック」よりも、観客動員数が少ない可能性があるのです。

そして、私のインフレの計算の結果から、今までの記録では「アバター」の観客動員数は「タイタニック」よりも少ないであろうことが推測出来ます。

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●映画・映像制作者として肝に命じなければいけないこと
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ちなみに、キャメロン監督の「アバター」が「タイタニック」よりも凄いか凄くないかの議論をしたいがためにこの記事を書いているわけではありません。

「アバター」が素晴らしい作品であるのには代わりはありませんし、今日の時点でアメリカ以外でも既に6億37百万ドル(約573憶円)を稼いでいるお化け映画です。

しかし、ここで何が私が言いたいかを簡単にまとめると

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・「アバター」は今のところ「タイタニック」にインフレ価格調整後では興行収入が負けている
・「タイタニック」は「風と共に去りぬ」に人口の換算後、観客動員数で負けている
・一番すごい映画は「風と共に去りぬ」
・70年前は、アメリカ全国民が2回「風と共に去りぬ」を観ている
・「タイタニック」はアメリカ全国民の半分
・「お化け映画」同士でも70年で動員数が3分の1に(涙)

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ということになります。

ということで、映画制作者として、興行収入だけではなく、テレビ・DVD・インターネットを駆使した収入モデルを考えていかないと行けないことが、実際の数字として分かりました。

統計学まがいの分析をして遊んでみました。

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最後に、あんまり関係ないですが・・・

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● TED.com – アーサー・ベンジャミン:数学の教育を変えるための公式
http://www.ted.com/talks/lang/jpn/arthur_benjamin_s_formula_for_changing_math_education.html

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<関連記事>
● 500ドルの映画と「アバター」の200億。制作会社経営者が考える制作費と経費計算
http://ja.katzueno.com/2009/12/1105/

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