ジョージ・ルーカス「ヒット作の作り方」の秘密

さて、私が毎週楽しみにしている、ロサンゼルスのラジオ番組に「The Business」というラジオ番組があります。

映画制作者ならば、絶対に聞かなくてはいけない、ハリウッド業界の話題満載のラジオ番組。

ただ、普通に、映画鑑賞が趣味な人は聞かない方がいいです。幻滅しますので・・・。

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とにもかくにも、この月曜日に放送された、「The Business」も、すごく良い内容でした。

なんと、ジョージ・ルーカス成功の秘密の1つが明かされたのです!?

● Blockbusting; Blowing Off ‘Hurt Locker’ – The Business
http://www.kcrw.com/etc/programs/tb/tb100215blockbusting_blowing

(青い「Listen」ボタンから実際に聴くことが出来ます。)

今回紹介する話題は6分52秒くらいから。

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■ ジョージ・ルーカスが過去300のヒット作品を解析
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そ の内容と言うのは、ジョージ・ルーカスが、自身のもつ出版社の編集者、Lucy Autrey Wilsonさんと、エンターテイメントジャーナリストで世界的に有名な、Alex Ben Blockに、過去に制作されたヒット作品を詳しく解析してくれと頼んで作った本の紹介です。

その本とは・・・

● George Lucas’s Blockbusting: A Decade-by-Decade Survey of Timeless Movies Including Untold Secrets of Their Financial and Cultural Success


日本でもアマゾンから購入出来るようです

http://www.amazon.co.jp/gp/product/0061778893?ie=UTF8&tag=katz515-22&linkCode=as2&camp=247&creative=7399&creativeASIN=0061778893

タイトルを日本語に訳すと

「ジョージ・ルーカス、ヒット作の作り方 – 年代別に映画を分析。収益と芸術的成功の秘密を探る」

と言った感じでしょうか。

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なんと、過去300作品の「ヒット作」と呼ばれた映画が、なぜヒットしたかを・・・

・予算
・撮影日数
・撮影したフィルムの量(時間)
・興行収入
・マーケティング
・配給方法
なぜこの映画を作ることになったかの経緯

を詳しく解析してヒットした理由を追求するという、映画制作者にとって、絶対に読まなければいけないマニアックな本になっているのです。

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映画は、残念ながら、他の芸術作品に比べて、制作するのにお金がかかります。

ですので、映画でお金を儲けるのは必須条件です。

し かし、”芸術”と呼ばれ、賞賛を受けているのは、映画の批評家から評価を受け、儲かっていない映画がほとんど・・・しかし、ルーカスは、エンターテイメン ト性の高い、ヒット作の中にも、芸術作品として認める部分はないのか・・・ということから始まったプロジェクトらしいです。

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■ 「國民の創生(The Birth of a Nation)」の本当の成功の裏側を探る
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例えば、D.W. Griffithの無声映画の最高傑作とされる「國民の創生(The Birth of a Nation)」

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●國民の創生(The Birth of a Nation) – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%e5%9c%8b%e6%b0%91%e3%81%ae%e5%89%b5%e7%94%9f

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グリフィス監督は、この作品で、今となっては当たり前となった技術をいくつも発明したのです。

・シーン(場面)の中に、いくつものカットをつなげ話しを伝える“編集”の基礎

・人物の顔だけを写して感情を強調する、クロースアップ

・そして、物語の設定を過去に振り返る、回想(フラッシュバック)を発明しました。

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今では、当たり前のこれらの技法。グリフィス監督が発明したものです。

なので、今、テレビや映画を観ている方、全てが、このグリフィス監督の発明の恩恵を受けているのです。

今話題の、バンクーバー・オリンピック。

スピードスケートのテレビ番組で、スタート前に、選手のアップが写されます。カーリングで、各選手の投てき前に、顔のアップを入れて、緊張感を演出しています。

化粧品のテレビショッピングで、綺麗になった奥さんの顔のアップのショット。

これ、全て、グリフィス監督が、この映画で発明したものだと言われています。

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当たり前すぎるので、ありがたみが無いですよね。

携帯電話を使っているみたいなものでしょうかね〜。

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とにもかくにも、この「國民の創生(The Birth of a Nation)」の映画は、これらの、クロースアップの発明など、芸術的な貢献に注目されているのですが、今回紹介している本では、もう1つ、この映画の成功に貢献した手法があるのです。

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それは

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「口コミ」マーケティング

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実は、この「國民の創生(The Birth of a Nation)」は、白人至上主義の、人種差別が強い作品でした。

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著者の ウィルソンさんとブロックさんの調査によると、この人種差別の激しい内容は、あえて、観客のクチコミを狙った、「マーケティング作戦」であったというのです。

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口コミマーケティングを利用し、興行的成功を収めた初期の作品が、人種差別映画だったのは大変残念ですが、それでも、映画制作初期の頃から、こういったマーケティングの手法が使われていたことがわかります。

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■ “マニア”の法則
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また、成功している作品のほとんどが「マニア」的なこだわりがあると言うのです。

プロデューサーが、モデルとなった人物に10年以上通いつめて説得し、制作権を得て作った映画が成功したなど・・・ヒット作には誰にも譲れない「こだわり」があったということも発見しています。

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ということで、ヒット作を作るには、特には冷酷とも言えるようなマーケティングを行い、数字・分析や新技術という「テクニック」が必要だけれども、最終的には、合理的とは言えないプロデューサーのカンや熱意も必要だと言うことが詳細に書かれている本だそうです。

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映画制作者必読の一冊でしょう。日本語訳が待ち遠しいですね〜。

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<関連記事>

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