CG仮想セット・1ショット500万円の秘密

さて、Twitterを見ていたら、以下のYouTube動画を発見しました〜。

ロサンゼルス郊外、パサデナにある、コンピュータグラフィックスタジオの、仮想セット(バーチャル背景)の作品集です。

● Stargate Studios Virtual Backlot Reel 2009

http://www.youtube.com/watch?v=clnozSXyF4k

すごいですね〜。今となっては、本物と見極めがつかないくらいです。すごいですね〜。

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■ 仮想セットを使うわけ?
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普段、こういったCGでの仮想セットを使うのは、

・コスト削減
・撮影が不可能な場所での撮影

などに注目されます。

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例えば、デモの一番最初のシーンは、裁判所の前で行われています。祝日でも、一般人でごった返す場所で撮影許可を取るのは至難の業。俳優とのスケジュール調整も悪夢になります。

そして、途中の船が燃えている事故のシーン。一隻、億単位のお金がかかる船を燃やすよりも、数百万円でCG作った方が安く上がります。

これらのシーンに、こういった仮想セットを使うのは分かりますね。

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ただし〜、上記のデモで、「なんで仮想セット?」と疑問に残るシーンが有ります。

それは、30秒目あたり・・・NHKでも放映されている「アグリー・ベティー」でのヒトコマ。TVレポーターが、建物から出てくるベティーにインタビューしようとして、ベティーがバス停のガラスにぶつかります。そして、ベティーが、ニューヨークの郊外を歩いているシーン。

また1分14秒目あたり、サンフランシスコでの撮影風景・・・。

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なんか、普通に現地へ行って撮影した方がいいような感じのシーンではないでしょうか・・・。

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なんで、彼らは、普通に撮影出来るようなシーンを、仮想セットで撮影したんでしょうかね〜。

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■ 値段を見てみましょう〜
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コストの問題かもしれません・・・。
仮想セットの方が安くつくのかな〜。

調べてみましょう・・・。

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私の知り合いに、某CG会社に勤めていた友人がいます。彼女に値段を聞いてみました。

「そうね〜、だいたい、1ショットにつき、300~500万円くらいかかるわね〜」

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1ショットです!

1秒だけでも、300〜500万円かかります!

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ちなみに、ニューヨークの歩道で数分間のシーンの1日撮影をすると、多く見積もって

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撮影許可:50万円(交通規制無し)
機材代:100万円
フィルム代:50万円
スタッフ 20人 = 100万円
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300万円

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高く見積もって、だいたい300万円かかります。

値段的に、現地で撮影した方が安くなります。

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現地で撮影した方が絶対に安くなりそうなのに、仮想セットでわざわざ撮影する矛盾。

なんでなんでしょうか・・・。

実は、これには、見えない理由があったのです。

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■ 実は“時間”をコストに入れると〜
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そう。

時間です。

例えば「アグリー・ベティー」。

シーズン中は、基本的に、毎週、新しいエピソードが放送されているので、1週間のうちに45分のエピソードを撮影しなくてはいけません。

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撮影スケジュールの計算をしてみます。

予算のある映画やテレビドラマは、1分の尺/1時間ほど撮影に時間を費やします。

その根拠を具体的に紹介します。

(ちなみに、予算の無い映画は、3〜5ページ/1時間)

週休2日として、週5日。

1日10時間とします。

しかし、1日の始まりは、セットアップや俳優さんのメイクアップに最低1時間かかりますし、撤収に1時間かかるので、撮影出来る時間は1日に8時間。

8時間 x 5日 = 40時間。

そして、ドラマの1話には、オープニングや回想シーンなどがあるので、実質的に撮影しなければいけないのは、1話につき40分とします。

ということで、40時間 ÷ 40分 = 1時間。

1分分のドラマを撮影出来るタイムリミットは、1時間です。
これ以上時間かかると、残業 & 徹夜です(涙)

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「アグリー・ベティ」の建物の外の短いシーンの撮影に戻ります・・・。

こういった実際の現地で撮影することを「現場(on location)」 と言うのですが、これ、効率が悪いのです。

最小限のクルー(カメラマン、監督、マイク、俳優)で現地に言ったとしても

・移動時間
・セットアップ時間
・撮影

という時間ロスをしてしまいます。

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特に、厄介なのが、この移動時間です。

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もうちょっと身近な例を・・・、東京で撮影していたとします。
メインの舞台が足立区の住宅地だったとします。

んで、例えば、「渋谷駅を降りる」シーンが10秒くらいあったとします。

45分のドラマでいうと10秒くらいのシーンに・・・

・足立区から渋谷へ移動 = 45分
・準備 = 10分
・撮影 = 20分
・足立区へ戻る = 45分

2時間もの時間を費やしてしまいました。

1時間に1分分の撮影をしなければいけないのに、10秒のシーンを撮影するのに、2時間かかってしまいます。

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これでは、大幅にスケジュールが遅れてしまいます〜!

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これで、クローン技術が発達して、同じ俳優さんを量産できれば良いのですが、倫理的にいけませんし〜。

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ということで、考えついたのが、仮想セットなのです。

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カメラマンさんやスタッフさんには悪いのですが、カメラマンさんは何人でも替りがいます。

ですので、カメラマンさんを一人余分に雇って、現場で仮想セットの背景となる素材映像を撮影してきてもらいます。

そして、お金さえあれば、何人でも替りのいる、グラフィックアーティストさんを雇って、その素材映像と、グリーンスクリーンのスタジオで撮影した俳優さんとの映像を、仮想セットを使って合成・完成させるのです。

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もう一点。

上記「アグリーベティー」デモで、ベティーが荷物を持って歩道を歩いているシーンが有ります。

ここでのポイントは、背景の「ニューヨークの地下鉄」です。

電車を貸し切るのは不可能。

ですので、いままでは電車のダイアを確認して、カンで電車が来るタイミングを図っていました。

しかし、それだと、10分に1度くらいしかこないニューヨークの地下鉄では、1時間のうち6テイクしか出来ないことになります。

それだったら、予算を立てて、自分の好きなタイミングで背景に地下鉄を走らせることが出来る仮想セットのほうが時間短縮になりますからね。

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これが、普通に撮影できるようなシーンでも仮想CGセットを使っている理由でした〜。

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■ 1ショット500万円って採算あるの?
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さてさて、1ショット500万円って、結構なお金です。

それを、アメリカのテレビドラマはどんどん使っています。

日本でも有名なアメリカのドラマ「24」「Heroes」「Lost」などのSci-Fiや、アクションドラマは、45分番組に、数億円もの予算が当てられているのです!

日本のドラマの10倍以上の予算。

というか、日本だっら映画1本分の予算ですよ〜。

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これらのドラマは、アメリカ数千万人の視聴者に加えて、ヨーロッパ、日本などでも放映されています。DVD販売もあるでしょうし、ゲームやグッズ販売もあるでしょう。

マーケットが広いからこそ、1話に付き数億円の予算をとることができるんですね〜。

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んで〜、数億円の予算の内の、数千万円だったら、全体コストの10%。

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そりゃー、贅沢に仮想セットを使って時間節約を図れますね〜。

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ちなみに、お金のないプロジェクトは、どうするかというと、脚本を強引にスタジオ周辺に変更したりして、移動時間を極力少なくしたりします。

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