Apple 「教科書の向こう」を見る千眼力

Apple が日本時間早朝、ひっそりと教科書に関する記者会見をしました。今までは本を売っていただけの iBook に教科書を売ることを決め、そして、なんと自分でも簡単に電子書籍を作ることができる iBook Author を無料で公開したのです。

私も早速 App Store からダウンロードして5分だけ使って見ました。

操作方法は、同社のプレゼン作成ソフト Keynote や Page を使いこなしている人なら、マニュアルを読まずに直ぐに使い出すことができます。

使い方に関する詳しい説明はいろいろなサイトが解説するだろうと思うので、今回は簡単に昨夜の発表がどれだけ教育現場や出版業界にとって脅威かを書きます。

アップル「教科書の向こう」教師を知り尽くした戦略

ここで、私が注目したのは、この iBook Author を無償で公開したアップルの戦略です。

さて、学校に通っている人も通っていた人も、自分たちの先生を思い出してみましょう。先生の中には熱心な先生が、自分で教材プリントを作って生徒に配布していたと思います。

それらの先生は、今まで電子書籍に対して全然関心を示さなかったでしょう。

しかし、今回、誰でも簡単に電子書籍を無料で作れ、そして無料ならば誰でも配布できるという iPad 限定の iBook Author を配布開始したことにより、先生の中には、こぞって iBook Author で教材を作る人が増えてきます。

そして、鍵は、この iBook Author が iPad でしか使えないということです。つまり、この教材を作った教師は iPad を薦めないといけないということになります。

普通のメーカーだったら、出版社止まりですが、アップルは違いました。

教育現場では、一般に発売されている教材ではなく、教師の手作り教材が授業の中で重要な役割を担い、市販の教材には絶対にとって代わることができないから取り込んでしまえとアップルが判断した戦略ではないかと思います。

紙から iPad に全面移行するための戦略:「プリント」から「プリント電子書籍」へ

つまり、紙から iPad に全面移行させるためには、教師が作る手作り教材も iPad に移行させる必要を感じたのでしょう。

そして、今までの iPhoto、iMovie、Keynote、Pages  などのノウハウを融合させ、しかもプリント代の大幅の節約となり、再利用ま簡単にできる電子書籍の可能性を見出し、iBook Author を無償配布することになったと思われます。

先生 & 一般の人が教材出版社と対等関係になることは?

また、これは教材の出版業者にとって、特にそれほどリサーチなど時間や専門知識を有しない教材を開発している教材出版社にとって脅威になります。

実際の現場で現場の生徒の声を聞いて教材を作っている教師の人の教材のほうが、生徒受けが良い可能性があるので、中にはカリスマ教師の教科書が出てくるかもしれません。

日本の場合は、教科書は文部省の許可が必要になってくるので教材出版社が無くなることは確実にありませんが、教科書ではなく教本を作っている出版社には脅威となることも?

教本出版社の人にも生き残る可能性はあります。

教本出版社は「プリント電子書籍」を作る「カリスマ教師」を見つけ出せ

最初、こういうものを取り入れるのは私立の学校や東京のデジタルテキストブック推進校などに限られますので見付け出す範囲は少なくて済みますが、早くて今年、遅くて5年後までには、学校のプリントを「プリント電子書籍」を作る教師が増え、その中でもプロ顔負けの教材を作る「カリスマ教師作家」が出てくる可能性があります。

教本出版社はそのようなカリスマ教師をいち早く見つけ出し、電子書籍から普通の印刷物、そして、全国各地へのマーケティングの協力をしたりするシステムを開発すれば安泰でしょう。

また可能であれば、「カリスマ教師が作る教科書」を作り出す可能性が高くなり、教科書の採用率が高くなりかもしれません。