concrete5 初のアドベントカレンダーのトップバッターを努めさせて頂きます。Katz です。
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今日は、私が concrete5 と歩んだ6年・・・、自分がウェブに求めて来た、自由に表現ができる世界を、いかに concrete5 で実現できたかを紹介します。
concrete5 以前のウェブとの関わり
私がウェブの世界に入ったのは 1996年の頃。メモ帳からサイトを作り出しました。映画制作の道を歩みたいと思っているのですが、地方ではあまり仲間が集まらず、簡単に表現ができる場所としてウェブを選んだのがキッカケです。
1999年にアメリカ留学をし、学生映画制作に勤しんでいましたが、ふとしたことから、とある雑誌のインタビュービデオ動画をウェブサイトに掲載するというバイトを2001年ごろから始めることになり、メディアでウェブ制作をするという仕事を始めるきっかけとなりました。
その頃は Dreamweaver でASPタグを打ったり、Table タグを整えたり、Adobe Flash Encoder や Windows Media Encoder でビデオ動画を圧縮したりと、全て家内制手工業的な更新を行っていました。
とにかく作業が面倒くさい!
しかも雑誌というメディアの仕事をしていると、同じフォーマットの内容を繰り返すだけの作業。改善ができないかな〜と思っていました。
CMS 「Mambo」との出会い
そうして知人のウェブデザイナーの紹介で2005年ごろに出会ったのが Mambo という CMS です。
今は Joomla という名前で生まれ変わって、世界 No.2 の CMS となっています。
大企業が使っているような管理画面付きのウェブサイトが、気軽に無料で作ることが出来る世界を知り、衝撃的でした。
難解な CMS との付き合い
Mambo から Joomla という名前に変わり、沢山のプラグインも出されました。
Joomla でもいろいろな事ができるようになりました。
2006年から、Entertainment Today というロサンゼルスで50年の歴史のあるフリーペーパーの会社に、会社全体のオペレーションを管理する Director of Operation として就職しましたが、最終的にウェブサイトの管理も任されるようになり、初めて Joomla で Entertainment Today のサイトを制作しました。これが仕事で CMS を使って構築した初めての仕事になります。
この知識のお陰で、後で日本人の私が、50年の歴史のあるロサンゼルスのフリーペーパーの編集長になることができました。
ただ、重大な問題が数々ありました。
- テーマを作るのが難しい
- キャンペーンなどバナーを貼りたいけど難しい
- プラグインがたくさんありすぎてしかも自分のやりたいプラグインが少ない
- テーマがたくさんありすぎて何を選んだらいいかわからない
インストールは簡単にできて、Dreamweaver を立ち上げてコードをイジり、運営更新する時間が減ったものの、プログラムをいじったりプラグインをインストールしたりする時間が増えてしまったのです。
2009年ごろより、WordPress も始めました。日本のコミュニティ活動が Joomla よりも WordPress のほうが活発だったからです。
2009年までに Joomla や WordPress を使って、数十以上のサイトを構築しましたが、結果は同じ・・・。確かに、更新する時間は短縮されたんですが、WordPress をメンテする時間が増えてしまったのです。
今までの CMS は、まだ HTML でサイトを手書きしている不自由な印象が残っていました。確かに一旦更新部分の設計を終えると更新が早くなているのですが、管理画面と公開ページを行ったり来たりせねばならず、メニューの後進をしたりトップページの更新時はヒヤヒヤものです。それは、今でも同じです。
日本を世界に発信したい JapanExp と YokosoNews とオープンソースコミュニティとの出会い
2007年日本に帰国しました。自分にはスポンサー企業ありで職もあったのに、リーマン・ショック前の好景気のため、応募多数の抽選で就労ビザを取得することが出来なかったのです。いわいる挫折です。
しかし、今までの自分の経験を活かし 2008年に Entertainment Today での経験を活かして、クールジャパンの日本を世界に紹介するソーシャルメディアを立ち上げようと、余った時間を使って活動をはじめました。
メディアを運営するには編集部を置かなければいけない・・・でも、お金がないので、SNSを使って編集部を作れないかと考えました。
その時、DAVICSという、映像関係者が集まっていたメーリングリストが、SNSに衣替えをしようかという話が上がり、管理者のかばさんが、MyNETS というオープンソースSNSプログラムを見つけてきました。
元々は OpenPNE というSNSソフトでしたが、そこから一部のメンバーが別れて Usagi Project というグループを結成し作ったソフトでした。
オープンソースやコミュニティの文化が余りわからないまま、Usagi Project のメンバーに加入した自分は、MyNETS の英語版の作成を始めたのです。
オープンソースの世界では、お金がなかったら、その分人的リソースのボランティアでまかなえるという利点を学び、それを活かしました。
その頃じゃ、MyNETS 英語版で編集部をバーチャルに運営し、Joomla か WordPress でメディアサイトを運営しようと考えていました。
concrete5 との出会いとその秘密
MyNETS で英語版をひと通り作成した時、2009年1月に Usagi Project のメンバーから日本語版を作らないと声がかかったのが concrete5 です。
実はコレには裏話が有ります・・・。
なんでも、Usagi Project のメンバーのところに、とある出版社の人から「concrete5 の日本語版を出して本を書いてくれない?」というオファーがあったらしく、その方は英語ができなかったので、たまたま MyNETS の英語版を作っていた私のところに声がかかったのがキッカケです。
とはいっても、この書籍化の話は、私が concrete5 本体の日本語化と YokosoNews のプロジェクトが忙しくて時間がなかったので自然消滅しています。concrete5 のコミュニティが小さかったため、当時は、日本語版開発から公式サイトの運営、イベントの参加全てをほぼ自分一人で切り盛りしていました。書籍化というより、この CMS に日本で最初に公式な人として携われることすごく魅力を感じていたからです。
concrete5 の衝撃と日本ユーザーグループの発足
concrete5 を最初にインストールした時、今まで Joomla や WordPress で出来なかった、コンテンツを自由に配置できるという操作性に衝撃を受けました。
すぐさま、concrete5 の開発をしているのが Andrew だという人物と分かり、メッセージすると、すぐさま「正式な日本ユーザーグループは立ち上がってないよー」と Franz の連絡先を教えてもらいました。Franz からもすぐ返事が来きました。
なんか concrete5 を作っている人って自由で、きさくで、たのしいなー。
そんな印象を持ったのです。それは、何度もポートランドに本文し、直接 Franz や Andrew に会った6年後の今も変わりません。
2009年4月 concrete5 日本語版リリース。改めて concrete5 の操作性に感動
Franz や Andrew に日本語チームとして活動を開始する確認をしたのが 2009年1月29日でした。2009年2月に初めてオープンソースカンファレンス 2009 Tokyo/Spring で公開しています。
それから、日本語公式サイトの開設が 2009年4月17日。そして、4月20日に晴れて日本語版をリリースすることが出来ました。
プログラムの修正やライセンスに関して Usagi Project メンバーみんなの協力があってのことでした。
その時、日本語公式サイトの構築は、自分ひとりで行っていたのですが、この直感的な操作方法で、サイトのコンテンツを作るということにすごく集中できたのです。
WordPress 、MovableType や Joomla では、味わえないあの時の感覚が忘れられません。
concrete5 で乗り越えた東日本大震災と変えた世界の災害報道
2010年、2年近い準備期間を経て concrete5 で YokosoNews のサイトを立ち上げることが出来ました。
日本や世界各地にいる外国人レポーターの力を借りて日本の文化をテキストや動画で紹介するソーシャルメディアサイトです。
ロサンゼルスに戻って日本のコミュニティ取材したり、日本の文化を紹介しつづけ、楽天さん、四日市商店街とのコラボも実現したりして、マネタイズもだんだん見えてきました。
そんなある日、訪れたのが、東日本大震災・・・そんな時に、大活躍したのが concrete5 の柔軟な操作性です。
元々、阪神・淡路大震災の経験から、在日外国人や旅行者が路頭に迷うのは確実でした。そのために2011年1月18日に「【募集】国際化の日本のため、外国人への防災知識を広めてみよう」という記事を書いています。
震災発生時、在日外国人の人が情報に困ると思い、急遽 YokosoNews のサイトを書き換えて、Ustream などを使って災害放送を行いました。
3月12日の枝野官房長官の記者会見の翻訳放送を行った時は、同時視聴者数が6千人近くにも上り、英語チャンネルで視聴者数1位となりました。
concrete5 と Ustream を使った情報発信の機敏さのおかげて、米ABC、中東アルジャジーラを始め、ドイツ、ロシアなど様々なメディアも、私の情報発信に耳を傾け、最終的には3ヶ月で動画の視聴者数は100万PVを超えるまでとなりました。(詳細は私のブログでいくつか記事を書いています。)
NHK さんも、自分の英語放送の視聴者数を見て驚いたのか、3/13 ぐらいから Ustream でも、NHK World の英語放送のサイマルキャストを開始されていました。
後でワシントン・ポストの記者さんに取材を受けたんですが、ネットの災害報道のやり方を変えるぐらいの改革を行ったとか褒められました。
concrete5 を使うと CMS の話をしなくなる!?
おっと。ここで話が脱線してしまいました!
concrete5 の話をしていたのに、concrete5 の話をしなくなりました。
なぜでしょう?
それは concrete5 を使うと、本来の情報発信にリソースを集中できる!
からなのです!
今まで、Joomla、WordPress、MovableType などの CMS だと、とにかく、ひたすら勉強して、勉強会に参加して・・・という CMS 中心になってしまいがちです。
concrete5 だと、直感的に操作ができる分、操作方法を覚える必要がありません。
そのため、他のCMSに比べてウェブで情報発信をするための情報(ネタ)集めに自分のリソースを集中させることが出来るのです。
みなさん、CMS のコードや制約に埋もれすぎていませんか?
本来、我々は Web ですべきことは、情報を発信したい人や、いかに効率よく、楽に、情報をほしいと思っている人に届けることで、それを行うことが出来るのが concrete5 です。
concrete5 と歩んできた6年と今後
今、YokosoNews をちょっとお休み。日本で一番クオリティーの高い多言語の印刷物やウェブサイトを制作できるエスケイワードを退職して、この6月にコンクリートファイブジャパン株式会社の一員となることが出来ました。
その理由は、concrete5 を使うと、もっと Web 制作が楽にできるということが、まだまだ世界に十分伝わっておらず、そして、「concrete5 公式活用ガイドブック」を共著&出版できた今が最初で最後のチャンスだと感じたからです。
今まで歩んできた6年間の努力を無駄にしたくなかったからです。
今後はしばらく、concrete5 の魅力を日本、そして世界に届ける仕事をしていきます。
具体的には、
- PortlandLabs との連携
- PortlandLabs エンタープライズ商品の販売代理
- concrete5 サイトの受託案件(インテグレートサポート)
- concrete5 構築のサポート(テクニカルなアドバイス)
- concrete5 提案・営業のサポート
- concrete5 制作パートナーの拡充 (インテグレートパートナー)
などを行っていきます。名古屋にいるので、みなさん、お気軽にお声がけください~。全国各地に飛んでいきます!
また詳しいビジョンなどは、12/25 に最後の @HissyNC さんのブログにバトンタッチします。
concrete5 のもう一つの魅力:人
最後に一点。
concrete5 のもう一つの魅力に、「ヒト」があります。
10月に、アメリカ・ポートランドに訪問しました。2009年、2010年につづいて、3回目となります。
concrete5 は、その CMS の機能性と直感性の他に、「ヒト」の魅力があります。
まずは、concrete5 の開発元で、開発主体である PortlandLabs の人々
5分ほどの簡単な紹介は、2014/11/29 (土) に OSC 浜名湖 2015 プレカンファレンスで行ったライトニングトークのスライド
詳しく知りたい方は、2014/11/17 (月) 東京のいいオフィスで開催した concrete5 イベントのスライド & YouTube 動画をご覧ください。
2009年、最初に訪問した時、彼らはオフィスを引き払い、自宅で作業していました。独立記念日でBBQを一緒に楽しみました。
2010年、倉庫を改造したオフィスに戻っていました。
そして 2014年、スペースの広いオフィスで、大きなプロジェクトを動かしていました。
彼らの気さくで自由なオープンソースの世界と同時にビジネスも大成させ、プライベートも充実させているというスタイルは魅力があります。
世界のコミュニティ
転職活動中、スイスに立ち寄り、concrete5 の中心人物の1人である Remo と出会うことが出来ました。
concrete5 は2014年現在は主にヨーロッパで使われています。PortlandLabs の他にもヨーロッパでの強いコミュニティ力が魅力です。
そして日本のコミュニティ
そして、なによりも自慢なのが、6年書けて皆で一緒に育ててきた concrete5 のコミュニティです。
北は青森、仙台、千葉、東京、浜松、名古屋、京都、奈良、大阪、広島と、時にはやり過ぎだろう(苦笑)と思うくらい勉強会を連発する強者まで現れました。
concrete5 の理念を受け継いで一緒に育てていきたいと思っている仲間が、これだけたくさん出来たというのは、concrete5 の世界のコミュニティ・・・いや、オープンソースコミュニティ全体でも世界で1番だと自慢できるものです。
(写真:鷹野さん)
みんなで一緒にやっていける。コンテンツに集中できる concrete5 。
初のアドベントカレンダーも開催出来たのも、このコミュニティがあってこそです。
今後も、みんなで一緒に concrete5 を作っていきましょう!
2014年 次のアドベントカレンダー
さて、アドベントカレンダー、1ヶ月のスケジュールはこちらをご覧ください。まだ3枠あるのでギリギリまで参加者募集中です。
そして、次のバトンは、竜胆Webデザインの古川さんによる concrete5 5.7 オリジナルテーマ作成時に気づいたことです!
# 古川さん、先日はいいオフィスのイベントに来て頂いていたのに、名刺交換できなくてすいませんでした〜。また次回お会いできた時にお願いします!