WEB屋、サーバー担当者さんが陥りやすい、クラウドの罠

世間で騒がれている「クラウド」の罠です。

無料オープンソース・サイト管理ソフト(CMS)の「concrete5」の開発をしている、アメリカ・ポートランド Concrete CMS Inc. の CEO、フランツが、興味深いブログ記事を投稿したので、ここで簡単に紹介して、私の解説を加えさせていただきます。

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“The cloud” is bad for web hosting

http://concretethestudio.com/?p=237

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■ 素人が陥るクラウドの罠

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フランツによると、最近、 concrete5 をクラウド上にインストールして、スピードが反対に落ちたと文句をいうユーザーさんがいらっしゃるとのことです。

実は、この私も、数年前、「クラウド」の言葉に魅せられて、とあるクラウド型のホスティングに加入した事があります。

しかし、クラウドに加入して、さあ大変。

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  • 普通のレンタルサーバーよりも速度が遅い
  • サーバーが1つ故障するとサーバーが繋がっているので連鎖反応がひどい(障害が多い)

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など、スピードと障害に見舞われてしまいました。

アクセス数も多くなってきたので、大切な仕事用のものは、専用サーバーやVPSなどに移行し、結局、クラウドのサーバーに残ったのは、別にどうでもいい小規模のHTMLサイトのみ…。「なんや〜、普通の共有サーバー使っているのと変わらんやん〜」と、思ったことが以前にありました。そして、上記のフランツのブログ記事です。

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Google のサービスや、 SalesForce.com のアプリを使う場合は、最初から、数百万人のユーザーが、同時に、クラウド上で使用できるように、きちんと設計され、テストを入念に行って公開されているサービスなので、スピードやパフォーマンスが最大限に活かされます。

ということで、Google のクラウドや SalesForce.com などのクラウドに既に最適化された既存のサービスを1ユーザーとして使用される場合は大丈夫ですが、この記事では、クラウド上で、自分で1からウェブサイトやサービスなどを構築する場合の落とし穴を紹介します。

とにかく、簡単にいうと、月間、数十万ヒット以下のサイトやサービスを運営する場合、クラウドで運用する意味が全くないということを説明します。

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■ クラウドを使うべき人

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専門的な話をするまえに、クラウドが必要な人はどんな人か、簡単に紹介します。以下の1つでも当てはまらない場合、クラウドを考える必要がないでしょう。

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  • 月間、百万ヒット以上のサイトやサービスを作っている
  • プログラムを最適化出来るプログラマーがいる
  • データベースの構造を理解しているSEがいる

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いまから、専門的なことを書くのですが、以上のことに当てはまるサイトと人材がそろっていなければ、クラウドを使ってWEBサイトやサービスを効率よく構築できません。

月間100万ヒット以下のサイトやサービスを使っている方は、共有サーバー、割安VPSや、専用サーバーなどの特別なチューニングが必要のないレンタルホスティングを契約されることをおすすめします。

そうでないと、一部の concrete5 ユーザーのように、下手にお金をクラウドホスティング業者に落としているだけになります(私のように)。

concrete5 を始めとする WordPress、Joomla、Drupalなど、ほとんどの CMS は、初期の状態では、1台のサーバー上のみで運用されることに最適化されています。その為に、クラウド上でソフトを運用するためには、カスタマイズが必要になってきます。

そして、それらのカスタマイズは、月間数十万ヒット以上の時に差が出てくるもので、スピードの向上を図るものではありません。

ということで、WEBサイトやWEBサービスをこれからやりたいと思う人で、将来、クラウドのサービスを使うかもしれない人向けの簡単な解説です。

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■ クラウドは「F1カー」というより「乗用車10台」

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「クラウド」サービスとは、データの処理をいくつものサーバーに分散させて処理を行うことです。

イメージで言うと、

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「今まで乗用車でデータ(荷物)を運んでいたが、データ(荷物)が多くなってきたので、一緒に運ぶ乗用車を1台増やした」

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というイメージを持ってください。

ここでのキーポイントは、乗用車(安物サーバー)を、積載量の多いトラック(高性能サーバー)に乗り換えるのではなくて、乗用車をもう1台購入して、荷物を運ぶことにしたのが、クラウドなのです。

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まず、最初に、月間100万ヒット以下のサイトを運用しているのにクラウドを導入しようとされる方。乗用車1台分(専用サーバー、月間100万ヒット以下)や、相乗り(VPSや共有 – 月間50万ヒット以下)だけで、荷物を運ぶことができるのに、車を2台走らせることは、ガソリンの無駄です。

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それに加え、クラウドは、ただ、車2台を走らせているだけではありません。走行中に、2台の間に綱を引き、走行しながら荷物(データ)のやりとりをしています。つまり、運転手(プログラマー)は、2台の車が、常に平行に同じスピードで走り続けるような運転技術(プログラミングやサーバー設定)が必要になってきます。

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ここで「えー、いろんなクラウドのサービスは、簡単だって」と言っている方も。それも事実で、最近では結構気軽にクラウド上で運用ができるようになってきましたが、それは、あくまでも、今まで「乗用車」サーバーから「F1」サーバーに乗り換えるのではなく「乗用車10台」のサーバーに乗り換えるだけです。

Concrete CMS Inc のフランツも、明確なテストを行っていないので分からないがと断っていますが、経験的に「パフォーマンスが遅くなっている」とのことです。

具体的に、クラウドと非クラウドのVPSや専用サーバー、クラウド、月間ヒットのの違いからくるパフォーマンスの簡単な例です。

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各サービスの一般的なスピード感覚(価格帯が同じくらいのもの)

月間1000ヒットのサイト

  • 共有 & VPS
    • 速い
  • 専用サーバー
    • 速い
  • クラウド
    • 遅い

月間10万ヒット

  • 共有 & VPS
    • 遅い
  • 専用サーバー
    • 速い
  • クラウド
    • 遅い

月間100万ヒット

  • 共有 & VPS
    • クラッシュ、もしくはアカウント停止される
  • 専用サーバー
    • 遅い
  • クラウド
    • 遅い

月間1000万ヒット

  • 共有 & VPS
    • クラッシュ、もしくはアカウント停止される
  • 専用サーバー
    • クラッシュ、もしくはアカウント停止される
  • クラウド
    • 遅い

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といった感じでしょうか(あくまでも、私の、concrete5, Joomla, WordPress, MyNETS, Drupal などを構築してきた私の経験上の基準です)。

ということで、クラウドの運用スピードは、他のサーバーに比べて、遅くなってしまいます。なので、実は、クラウド上でプログラムを上手く運用している方は、プログラムのチューンアップなどをこまめにしているのです。

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■ クラウド導入の時のコツ

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また長くなってきたので、簡潔に、クラウド導入するときのコツです。

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  • 月間100万ヒット以上のサービス、もしくはそれを目指している
  • プログラマーが常駐している
  • データベース管理者が常駐している
  • プログラムが意外とコンパクト設計、プログラムが使用するサーバー向けにチューンアップできている
  • サーバーのキャッシング機能を強化させる等、サーバー自体の設定もチューンアップされている

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それでは、よりよいクラウドの活用を〜。

とにかく、大規模サイト運用をする必要のない方(具体的には月間100万ヒット以上)クラウドではなく、お金や、手間を考えて、普通のレンタルサーバーやサーバーを選びましょう〜。

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