チリ鉱山救出には国の威信をかけたマーケティングが

久しぶりの時事ネタです。

仕事をしながら、イギリスBBCの生放送を24時間近くつけっぱなしで見ていました。

イギリスのBBCやアメリカのCBS News、そしてスペイン語の放送局各社が、救出の模様を24時間放送し続けています。

そこで気がついたことがあります。

なんか、メディア戦略が凄くない〜?

実は、鉱山救出の現場は、一般の報道陣は入れません。なんと、チリの国営放送のスタッフが、14台のカメラを入れて、その放送を世界各地のメディアに配信していたのです。

しかも、BBCのインタビューに、大統領がなんども出演し、救出の成果とそして反省すべきことを正直に述べています。

というか、チリの政府は、本当に、メディアやソーシャルメディアを上手く活用し、チリという国のプロモーションを大成功させました(今のところ)。

ということで、途中経過ですが、彼らが行ったマーケティング術を解説します。

大統領がメディアを理解し、リーダーシップがある。ビジネス面でも頭が良い上に、しかも政治家として道徳的にも正当な判断をしているというまれに見ない快挙でした。

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■ メディア対策:自分の都合の良い放送スタッフのみを投入するが、生の映像を迅速に配信

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実は、チリ大統領のセバスティアン・ピニェラ大統領は、企業家、そしてチリ・メディア界のドンでもあります。

大統領の公式ホームページは、なんと日本語ページもあります

● 政府によるピニェラ大統領の公式プロフィール
http://gobiernodechile.cl/presidente/jp/

ハーバード大学を卒業後、チリに戻り、企業家として初めてクレジットカードを導入し、大統領に当選するまで、不動産、出版、そしてテレビ放送局も経営していました。

なるほど、放送局の経営者だったからこそ出来る全世界中継。ニュースの節々から、この事故救出劇は、国の威信をかけた世界へのプロモーションであったと、BBCをはじめとする周りのチリの専門家たちも異口同音に解説しています。

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なんで、こんなことが確信的に言えるかというと、最初の作業員が救出されたときに大統領が待機していたこと。そして、最後の作業員リーダー格であるルイス・ウルスアさんが救出された瞬間、放送局は、必要以上に大統領のクロースアップを撮影していました。

これは、最後の救出者と大統領の顔をオーバーラップさせ、今回の救出劇は、国のトップである大統領の直轄で行われ、そして、それが大統領のおかげで成功したという映像効果を世界中に配信することが目的の演出が入っていました。

これは、放送局でスイッチャーを経験している人であれば、分かると思います。

あれだけの頻度で、大統領の顔と、カプセルの穴の間を、頻度にスイッチングをかけるということは、大統領側から、必要以上に演出の指示があったとしか思えません。

それか、放送ディレクターか、スイッチャーの人がどれだけ大統領を慕っているかのどちらかです。

そして、世界各地の放送局は現場への立ち入りを禁止されていますから、政府側が用意した放送を使用するしかありません。

最後の作業員救出の際、フジテレビも日本テレビが中継をしていたようですが、チリ政府の大統領を映し出し続けるという演出の放送を流し続けました。

ただ、政府側も、カメラを14台用意し、リアルタイムに映像を提供することによって、世界メディアからの不満は一切ありません。

報道陣を入れないということは、もちろん、作業員の邪魔にならないようにという安全や配慮もあります。

ある意味、チリ政府は、中国や北朝鮮のメディア統制と同じ程度の報道規制かけているのですが、その分、メディア各社が納得するだけの映像素材を大盤振る舞いに提供することにより、メディア各社の要望に答えました。

24時間14台のカメラ映像を提供し続けました。そして、最後の一番のメインイベントの演出の時のみ、大統領のかおえおより沢山映しだす映像を世界各地の放送局に配信することに成功したのです。

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■ ブログ対策:政府機関が Flickr を利用して写真もリアルタイムに公開

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Flickr とは、Yahoo! が運営する写真共有サイトです。それを、チリ政府がアカウントを取得し、しかも自由に使っても良い「クリエイティブ・コモンズ」のライセンスでも公開しています。

● チリ政府鉱山局(公式な日本語訳不明?)の公式 Flickr アカウント
http://www.flickr.com/photos/rescatemineros/

これらの写真を自由に使って、原作者の表記をきちっとすれば、ブログやニュースなどに使って良いという太っ腹な公開をしています。

チリが今までにない救出劇を演出したというイメージを、1時間以内に写真で世界中に、ユーザーに向けて配信していました。

以上のような世界中への迅速な素材配信は、以前にも「アップルのプレゼン術」というシリーズの中に事例として書いているので参考にしてください。

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<関連記事>

● 気軽に作れる自分放送局セット
http://ja.katzueno.com/2009/05/1008/

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● 映画制作者の為のマーケティング術
http://ja.katzueno.com/2008/10/847/

●アップルのプレゼン術を盗め!(その1)
http://ja.katzueno.com/2008/10/819/

アップルのプレゼン術を盗め!(その2)
http://ja.katzueno.com/2008/10/822/

アップルのプレゼン術を盗め!(その3)
http://ja.katzueno.com/2008/10/826/

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■ でも、本当にあっぱれ

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先日亡くなったプロ野球解説者の大沢さんに敬意を表してもあるのですが、チリ政府や、ピニェラ大統領は、本当に危機管理と“国”ビジネスの面であっぱれだと感じました。

行動力が凄い。

そして、ソーシャルメディアを使いこなした戦略をしました。

世界中から助けを呼ぶも、同時に、別々の業者に3つの穴を掘らせて競争させます。

そして、クライマックスは、大々的なメディア戦略をします。

それに加え、大統領は、自分の利益のみを自慢するのではなく、BBCのインタービューで、堂々と「事故があったのは、政府に監督責任があった」と政府側の責任を早々に認めています。

危機管理がすばらしかったです。

今回の事件は、企業の皆さんや、政治家、地方自治体の人が参考にするべきすばらしい救出劇でした。

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